BTRON サブプロジェクト以下では、項目別に概要と現在の状況を述べる。
このような背景から研究、設計されたのが BTRON の HMI 仕様であり、その成果は仕 様書に収められている。仕様書では、まず操作方法の原則(トロン作法)を決め、それ の具体例としてカーソルの移動方法、メニューやパネルの操作方法、などといったパー ツの仕様を規定し、さらにその応用としてウィンドウの移動方法、文章や図形の編集方 法などの仕様を規定している。
ところで、最近ではコンピュータに限らず、 VTR などの AV 機器、留守番電話などの 家電製品もインテリジェント化が進み、仕様が複雑化し、容易には使いこなせない状況 になっている。 BTRON では、このように複雑な機能を持つ家電製品の操作方法がどう あるべきかを考え、それとコンピュータの操作方法を連携させるような研究を行ってい る。例えば、 VTR のリモコンを使って番組の録画予約を行う場合と、 BTRON マシン からネットワーク経由で番組の録画予約を行う場合の操作方法をできるだけ同じにし、 かつわかりやすくするにはどうすれば良いか、といった問題が研究テーマのひとつであ る。なお、この研究活動を行う母体としては、トロン電子機器 HMI 研究会が設けられ た(詳細については別章参照)。
また、文字コードのようなものも広い意味ではこの範ちゅうに含まれ、かつ影響が大き い。ワークステーションやパソコンの文字コードは、英語に関しては ASCII でほぼ統 一されているが、日本語に関しては JIS 、シフト JIS 、 EUC などいくつかのコード が併存し、混乱を起こしている。
こういった観点から、 BTRON はデータ形式の標準化を重要なテーマとして考えており、 以下のような規格を決めている。
アプリケーションプログラムを流通できるようにするためには、アプリケーションプロ グラムと OS との間のシステムコールインタフェースの仕様、すなわち OS の仕様を標 準化する必要がある。また、仮想マシン方式を使わず、オブジェクトコードで互換性を とるためには、 CPU の命令コードの互換性も必要であるし、 CPU のワード長などの 影響も受ける。そこで、具体的な BTRON の OS の仕様として、 16 ビット CPU およ び小規模ハードウェア向きの BTRON1 仕様、 32 ビット CPU および大規模ハードウェ ア向きの BTRON2 仕様、 BTRON1 仕様と BTRON2 仕様の良い点を取り入れ、さらに ITRON 仕様 OS を含めた疎結合分散環境への対応をめざす BTRON3 仕様が設計された。 いずれの仕様も、 BTRON の HMI や TAD の実現に適した機能を持ち、ビットマップ 上に表示される絵やウインドウを使った操作環境の実現を前提としたマルチタスクの OS である。
BTRON1 仕様、 BTRON2 仕様、 BTRON3 仕様では、それぞれの対象とするハードウェ ア規模に合わせて、内部構成が違っている。具体的には、 BTRON1 仕様 OS では、ハ ードディスクの無い環境やメモリ容量の制限が厳しい環境でも動くように、内部の作り 込み(特定の CPU や特定のシステムに対するチューニング)が進んでいる。実際、 BTRON1 仕様 OS は、 iAPX286 ( iAPX386 ではない)かつハードディスク無しと いう環境でも実用的なウインドウシステムの使える OS である。小規模なハードウェア でも動作するということは、電子手帳などの携帯用情報端末やサブノートパソコンに実 装する場合に特に重要な項目である。
これに対して、 BTRON2 仕様 OS や BTRON3 仕様 OS では、保守性や拡張性、分散 環境への対応などを考慮してモジュール化構造をとっている。具体的には、まず OS を 中心核、周辺核、外殻の 3 層に分け、中心核の仕様は ITRON 仕様のサブセット( BTRON2 の場合は ITRON2 のサブセット、 BTRON3 の場合は μITRON 3.0 のサブセッ ト)となっている。また、周辺核や外殻については、その操作対象に応じて独立したマ ネージャを設けている。 ただし、これらの違いは OS の内部構造の違いであって、エ ンドユーザから見たコンピュータの操作方法( HMI )および TAD などのデータ形式 については、 BTRON1 から BTRON3 まですべて共通である。
このうち、 BTRON3 仕様 OS は、 BTRON1 仕様 OS や BTRON2 仕様 OS の特徴に加 えて、疎結合の分散環境への適応性、特に ITRON 仕様 OS を含めたヘテロなネットワ ークへの適応性を目標として設計された OS である。 BTRON3 仕様 OS の内部構成を 図 1 に示す。 BTRON3 仕様 OS では、接続機能を持つ μITRON3.0 仕様のリアルタ イム OS を中心核として利用することによって、 μITRON3.0 仕様の OS を実装した 他の組み込み制御用コンピュータとの接続性を高めている。ここで、 μITRON3.0 の 接続機能とは、疎結合ネットワークで結ばれた別のコンピュータの資源(タスク、セマ フォなど)を、同一コンピュータ内の資源を対象とした場合と同様のシステムコールに よって直接操作する機能である。 BTRON3 仕様 OS では、中心核の持つ接続機能を BTRON のアプリケーションからも利用することにより、ネットワークで結ばれた他の 制御用コンピュータに対して柔軟かつ効率のよい指令を出すことができる。これは、 TRON プロジェクトで提唱している超機能分散システム( HFDS : Highly Functional Distributed System )の実現のために重要な機能である。
図 1 BTRON3 仕様 OS の内部構成

BTRON1 仕様 OS 、 BTRON2 仕様 OS 、 BTRON3 仕様 OS では、 CPU が異なるた め、オブジェクトコードレベルの互換性はない。しかし再コンパイルにより、アプリケ ーションプログラムを容易に移植することが可能である。また、エンドユーザーから見 たコンピュータの操作方法( HMI )および TAD などのデータ形式については、 BTRON1 、 BTRON2 、 BTRON3 で共通になっている。
キーボードの仕様を決めるファクターには、大きく分けて物理的配置と論理的配置の 2 つがある。前者はキーボード全体の物理的形状を意味する。現在広く使われている従 来のキーボードは、 100 年以上前に作られた機械式タイプライタの物理形状をそのま ま受け継いでいる。これは、「人間が機械の都合に合わせる」という古い考え方をその まま引きずったものであり、人間にとっての使いやすさを本当に追求して設計されたも のではない。そのため、使いにくいだけでなく、指の動きに無理な負担がかかり、健康 上よくない要素を持っている。
これに対して、トロンキーボードでは、「どういうキーボードを使えば人間側の負担が 最も少なくなるか」を労働医学や人間医学や人間工学的見地から徹底的に追求すること により設計が行われた。具体的には、数百人の手のサイズや指の動きを実際に計測し、 指の動く範囲をトレースし、指の移動量や疲労が少なくなるように人間工学に基づいた 解析を行うという方法が用いられた。その結果、中央部の盛り上がりの傾斜角度や、キ ーのピッチなどに関しても、人間工学的に最適な値が規定された。
一方、論理的な配置というのは、キーの割当て、すなわちキーと文字や機能との対応を どうするかということである。英語を扱うコンピュータやタイプライターの場合は、 QWERTY 配列が広く普及している。一方、日本語(かな)に関しては JIS 配列が普及 しているが、 JIS 配列とはまったく異なった新 JIS 配列も規定され、それ以外に親指 シフト(ニコラ)配列もかなりのシェアを持っている。
トロンキーボードの場合、日本語については何百万文字もの文章データを解析し、シフ ト回数の減少や交互打鍵による打ちやすさの向上を考慮しながら、新規の論理的配列 (トロン配列)を規定した(図 2 )。このため、指のむだな動きを最小に抑え、入力 効果を上げることが可能である。なお、新 JIS 配列なども似たような手法で設計され たものであるが、トロン配列の場合は、シフトキーやかな漢字変換キーなど文字キー以 外の重要なキーについても考慮しているという特徴がある。一方、トロンキーボードの 英語の配列は評価の高い DVORAK 配列となっている。
図 2 トロンキーボードの日本語配列の図
BTRON では、標準的なポインティングデバイスとして電子ペンを推奨している。その ため、トロンキーボードの物理的形状を設計する際には、電子ペン用のデジタイザがキ ーボードのパームレストと一体化するような設計になっている。電子ペンは、「ペン」 といった日常利用している文房具と共通の感覚で操作でき、「マウス」といったコンピュ ータ特有の道具を用いなくても済むため、コンピュータに不慣れな人でも容易に利用す ることができる。また、電子ペンを使えば、マウスとは異なり、手書き入力への対応も 可能である。そのため、マウスに代わる次世代のポインティングデバイスとして、電子 ペンは最近特に注目を集めている。
ところで、これまでの話題はコンピュータを使うエンドユーザー側から見た話、すなわ ち周辺機器の HMI に関する話題であったが、これ以外に、 BTRON では周辺機器のイ ンタフェース仕様に関する規定も設けている。これは、周辺機器の互換性をできるだけ 確保し、周辺機器の使い回しができるようにするためである。具体的には、各種のコネ クタの仕様や、キーボードインタフェースの仕様に関して BTRON としての標準を設け ている。キーボードインタフェースに関しては、コネクタの形状だけではなく、物理的、 論理的なプロトコルも規定することにより、 BTRON マシンのキーボードは原則として 相互に差し替えることが可能となっている。これに加えて、 BTRON マシンの拡張ボー ドのバス仕様や、外部 CRT のインタフェース仕様についても標準仕様を提示している。
また、 BTRON では、パソコン本体に接続される多様な入出力機器、例えばイメージス キャナ、カメラなどを「電子文房具」として扱う。これらの電子文房具を接続するため のバスの規格として μBTRON バスがある。 μBTRON バスでは、リアルタイム性を重 視するためにトークンリング方式を採用しており、伝送速度は 4M ビット/秒である。
実身仮身モデルの特徴は、実身(文章や図形)の中に他の実身を指す仮身が混在できる という点である。このため、文章や図形の中に仮身を入れておき、さらに詳しい情報を 見たい場合はその仮身を開く、といったハイパーテキストの機能が自然に実現できる。 たとえば、本の各章を別々の実身(ファイル)に分割してそれらに対する仮身を入れて おけば、本全体の構成を見ながら、読みたい章だけを詳しく読むことができる。また、 用語に注釈を付ける場合に、注釈の中身は別の実身に入れておき、本文にはそれを指す 仮身のみを入れておくことにより、注釈を読みたい人だけが必要な場所で注釈を読むこ とができる。
また、実身仮身モデルでは、 1 つの実身に対して複数の仮身を設けることを許してい る。すなわち、仮身のコピーを複数用意して、必要な箇所(実身を参照すべき場所)す べてに仮身を置くことができる。上記の注釈付けの例で言うと、注釈を付けられる語が 本文中の仮身として複数出現しても、その仮身の指す実身、すなわち注釈の中身は 1 つで構わないということである。結果的に、実身と仮身の参照関係は、木構造ではなく、 ネットワーク構造になる。ループ状の参照関係があっても構わない。
BTRON の実身仮身モデルの特長を活かしたハイパーテキストの例を図 3 、図 4 に示 す。図 3 は、野球の試合のスコアボードの情報を実身仮身モデルでうまく表現した例 で図 3 実身仮身モデルを野球のスコアボードに応用した例

ある。「巨人」「ヤクルト」などのチーム名や「桑田」「緒方」などの選手名の部分が 仮身になっており、それらの詳しい説明を示す文書(実身)を指す。また、「打撃成績」 のウインドウを表示しているのは表計算のプログラムであるが、この中にも選手名の仮 身が現われている。同一の実身を指す同名の仮身を各所に置けるという実身仮身モデル のネットワーク構造の特長をよく示している。また、図 4 は BTRON のユーザが実身 仮身モデルの上に北海道の旅行記を作成した例である。見たいところを詳しく見るとい うハイパーテキストの機能がうまく利用されている。
図 4 実身仮身モデルのハイパーテキスト機能を利用した旅行記
TRON プロジェクトでは、早くからこういった点に着目し、障害者に対応したコンピュ ータの操作方法がどうあるべきかということに関して、実際の障害者の方々のご意見を 伺いながら検討を続けてきた。その成果をまとめたものが BTRON のイネーブルウェア の仕様である。「イネーブルウェア」というのは TRON プロジェクトで提案した造語 であり、英語の enable (物事を可能にするという意味)という単語を元にしている。
イネーブルウェアで実現される具体的な機能としては、目が見えにくい人のためにウイ ンドウのタイトルやメニューの文字を拡大する機能、手の震えがある人のためにキーボ ードの反応時間を調整する機能、シフトキーなどの同時押しができない人のためにシフ トキーを一時的にロックする機能などがある。 BTRON では、これらの機能を OS のレ ベルで提供することにより、すべてのアプリケーションが自動的にイネーブルウェアの 機能を利用できるようになっている。また、全盲の方でもウインドウシステムを利用で きるように、画面のウインドウ配置やポインタの位置、メニュー、パネルのボタンなど を読み上げる機能も実現されている。
これらの機能は、もともと障害者の方々のために導入された機能であるが、健常者に対 しても、仕事中で片手がふさがっている場合や電車の中で携帯用のコンピュータを使う ような場合などには効果がある。イネーブルウェア機能は、広い意味でのカスタマイズ 機能の一つである。
BTRON1 仕様 OS は、現在 IBM-PC 互換機( DOS/V パソコン)や富士通 FMR-50 シリーズなどの一般市販パソコンの上にも移植されている。特に、 IBM-PC 互換機( DOS/V パソコン)への移植により、海外メーカー製も含めてハードウェアの選択の幅 が大きく拡がり、マシンのコストパフォーマンスも大幅に高くなった。 IBM-PC 互換 機のウインドウソフトとしては、通常 Windows3.1 が利用されているが、日本語のソ フトはまだ少ない、アプリケーションの操作方法や連携方法が不統一、 MS-DOS の影 響による不可解な制約(ファイル名の文字数など)などといった問題点も多い。 IBM-PC 互換機に BTRON1 仕様 OS を実装することにより、こういった問題点が解決 され、 IBM-PC 互換機のハードウェア、 BTRON 仕様 OS ともより一層の普及を図る ことができるだろう。
BTRON/286 を用いた製品は松下通信工業(株)による PanaCAL ET とパーソナルメ ディア(株)による電房具 1B シリーズがある。
PanaCAL ET は、教育用という限定があるものの、商品化された BTRON 仕様のパソ コンとしては初めてのものである。 BTRON 仕様に準拠した OS 、 ET マスターを搭載 している。 PanaCAL ET では、マルチタスク、マルチウィンドウの機能を利用するこ とにより、教材作成の効率が向上し、豊富な表現が可能になる上、トロン作法によって 操作方法も統一され、一度覚えるとマニュアルなしで操作可能である。これらの点は BTRON の特徴でもあるが、コンピュータの操作方法やつまらないコマンド名の暗記に 煩わされることなく、教材の中身の学習に専念できるというのは、教育用という位置付 けを考えると特に重要な点であろう。もちろん、マルチメディアにも対応しており、教 材の中に動画や音声を組み込むことが可能である。
パーソナルメディア(株)の電房具 1B シリーズは、 BTRON1 仕様に準拠した OS 「 1B 」を実装したパソコンやソフトウェアの総称である。「 1B 」は、実身仮身モデル によるハイパーテキスト機能、障害者向け機能(イネーブルウェア機能)、「トロン作 法」として洗練かつ標準化された操作方法などといった BTRON の特長をすべて備えて いるほか、基本文章エディタ、基本図形エディタ、リアルタイムの図形通信ができる通 信ソフトウェアや各種のユーティリティがはじめから付属しており、これだけで高機能 かつ知的な文書作成ツールとして利用できる。
電房具 1B シリーズには、 IBM-PC 互換機( DOS/V パソコン)用にソフトウェアの 単体販売を行う「 1B/V1 」(「 1B/V1 スタンダード」および「 1B/V1 マスターズ」) 、高性能なデスクトップパソコンに「 1B 」を実装した「 1B/desktop シリーズ」 (図 5 )、画面のきれいなカラーノートパソコンに
図 5 DOS/V パソコンをベースとした電房具 1B/Desktop

「 1B 」を実装した「 1B/note-Jet 」、携帯性に優れた A5 サイズのサブノートパソ コンに「 1B 」を実装した「 1B/pad 」(図 6 )など、数多くのモデルが販売されて いる。
図 6 電房具 1B/pad

また、電房具 1B シリーズで利用できる周辺機器やアプリケーションとして、画面を直 接手で操作できるタッチパネル、画像読み取り用のハンディスキャナ「 1B スキャナ」、 BTRON の画面から電子ブックを操作する「 1B 電子ブックリーダー Z 」、実身仮身モ デルや図形を扱える表計算ソフト「 1B 表計算」、トロン作法で使えるカード型データ ベース「 1B マイクロカード」、プレゼンテーションや機器の制御に威力を発揮するマ クロ言語「 1B マイクロスクリプト」、リアルタイムの図形通信ができる先進的な通信 ソフト「 1B 通信ソフトウェア」などが販売されている。
パソコンメーカーやシステムメーカー向けには、「 1B 」の移植や OEM 供給の体制も 用意されている。また、 BTRON の場合、国内のソフトウェアメーカーが自力で開発し ているため、 OS の改造やカスタマイズが自由にできるという特長がある。
「 2B 」「 3B 」は OS の名称であり、システムメーカーなどに OEM 供給するための 製品である。一方、これらの OS にハードウェアを付けてワークステーションの形態に したものが「 MCUBE 」である。「 MCUBE 」は、従来のワークステーションと同様に 利用することもできるが、 ITRON 仕様 OS やトロン仕様チップを内蔵している点を活 かして、リアルタイム性の必要な工業プラント制御用マシン、 ITRON 関連の開発用マ シンなどに利用される例が多い。
さらに、 TK1 の内部にはワンチップのマイコンが内蔵されており、そのプログラムを 変更することによってキーの配列を変更したりすることが可能である。
図 7 TRON 仕様キーボードとタッチパネル
表 1 μBTRON バスの基本仕様

μBTRON バスでは、より高いリアルタイム性を保証するため、送信フレームのデータ 長を最大 136 オクテットに制限し、リアルタイム性の高いデータが優先的に送信され る優先度制御( 4 レベル)を導入した。これにより、ファイルデータなどの大量デー タの転送によりネットワークに高負荷がかかっている場合でも、リアルタイム性の高い データは 1msec 以下の遅延で送信可能である
また、 μBTRON バスのコネクタはホシデン(株)により開発されたものであり、ネッ トワーク運用中でも機器の脱着ができるように機械式のループバック機構が設けられて おり、ケーブルを抜くとそのコネクタ内で自動的に信号が折り返されるようになってい る。
表 2 CML2 仕様概要

CML2 では各局が自分のクロックで送信、中継を行う独立同期方式を採用している。隣 接局とのクロックの周波数差によるビットの抜けや涌きだしについてはトークン、フレ ームの内部では発生しないよう CML2 が調整する。この方式により、隣接局間の通信 ができればリングを形成しても問題なく通信できることになり、多数の機器を接続して 動作させることが容易にできるようになっている。
もう 1 つの機能上の特色として、 CML2 は送信と受信それぞれにリアルタイムデータ 用と非リアルタイムデータ用の 2ch の DMA 機構を内蔵している。 DMA の各 ch は複 数(任意数)のバッファをつないで使用できるバッファチェインをサポートしている。 この機構によりソフトウェアの負担を減らすことができる。
また、トークンリングのような LAN に対するコントローラ LSI においては、内部にプ ロセッサを持ち、そのファームウェアがプロトコル制御を遂行するという構成をとるの が開発期間などの面で有利であるが、この CML2 の内部はすべてワイヤードロジック で構成されている。これにより CML2 はネットワークの最大転送速度まで追従できる という高速性を持つことができた。実際、バッファチェイン機能を用いてソフトウェア のオーバーヘッドを減らした場合、 10000 フレーム/ sec 以上の性能が実測されて いる。また、 LSI チップ面積も約 5mm 角( 1 μプロセス)と小さく、廉価で提供で きるようになっている。
今後は、コンピュータハードウェアの高性能化、低価格化や小型化に伴い、 BTRON の ようなウインドウシステムの活躍の場はますます広がるだろう。それに伴って、 BTRON サブプロジェクトの意義もますます重要になる。そのチャンスをうまく活かし て、 BTRON のさらなる普及を図りたいと考えている。