中国μCTRONセミナー実施報告

CTRON専門委員会
幹事 大久保利一

1.まえがき

6月2日から6月7日まで、北京・上海で中国計算機軟件与技術服務総公司(以下「CS&S」)とトロン協会CTRON専門委員会との共同で実施したμCTRONセミナーの実施報告を行う。

2.セミナー状況

セミナーは、6月3日に北京CS&Sのキャンパス講堂において、6月6日に上海ソフトウェアセンターとも共同で、上海市教育文化会館会議室で行われた。

セミナーの次第は北京・上海共通に以下のプログラムに沿って実施された。

9:00 開会の挨拶

9:10 中国側挨拶

9:15 日本側挨拶

9:30 稲葉氏作品の説明・作品デモ

11:30 昼食

12:30 大久保作品の説明・作品デモ

14:30 質疑応答

15:30 閉会の挨拶(中国側・日本側)

北京では、中国側の挨拶をCS&S国際事業本部長Yin氏が、司会をCS&S社基本ソフト事業本部Liu氏がつとめた。上海では中国側挨拶を上海交通大学のBai教授が、司会を上海CONTECのSun氏がつとめた。日本側挨拶として大久保が、μCTRONコンテストの概要とその成果としてのフリーソフトウェアの位置づけ、このフリーソフトウェアを用いた新たな移植、アプリケーションコンテストの提案を行った。また、マニュアルの中国語化のコンテストを行うことも提案した。

各セミナーでの出席者は、北京セミナーではCS&Sの若手開発者を中心として、主要な官庁担当者(電子工業部のソフトウェア部門のみでなく、科学技術品質部門の担当も複数参加)を交え約40名。上海セミナーでは、大学の先生方を中心に中小ソフトウェアハウスのメンバーも参加し、50名弱が参加していた。

北京では主に稲葉氏のX86系MPUでのμCTRON実装に関する質問が多く出された。上海では小型の組込み型システムへの応用関連で大久保への質問が多く出ている。また、新たなコンテストへの対応の仕方に関する質問もその場で出され、CS&Sを経由して情報を提供するほか、WWWにも早急に載せ、アクセス可能とすることとした。コンテストの締め切りなど詳細をCTRON専門委員会で議論していなかったが、締め切りはせめて9月末にして欲しいとの要望があり、何れのコンテストも9月末を締め切りとすることとした。

上海では司会のSun氏がボランティアとなり、それぞれのコンテスト対応のタスクフォースを作り対応することを参加者に提案し、直ちに賛意を得て幾つかのグループを募っていた。

μCTRONに対する興味の焦点は、対象者によってそれぞれであるが、μカーネル技術に対する共通の熱意が感じられる。

3.中国ソフトウェア産業事情

表記について、CS&Sおよび上海のソフトウェア関連講座を持つ教授にヒアリングした経緯を報告する。

中国のソフトウェア産業規模は、96年度95億元(概ね1360億円:購買平価規模から正規化すれば1兆3600億円相当か)。前年度からの成長率では30〜40%の増加となっている。北京地区においては、ほぼ全国平均と同等の成長率である。

一方、上海地区では10億元(概ね143億円)の産業規模であるが、成長率は60〜70%となっている。地域による成長率の差は大きなものがある。このような成長率を支える人的リソースのサポートについては、上海では年間2000名の情報処理関連卒業者を輩出することで可能としている。例えば、上海交通大学では学部生180名、修士90名、博士10名、復旦大学では学部生150名、修士90名、博士10名、上海大学では学部生320名、修士50名、博士は不明、など多数の学生を供給し著しい成長に寄与している。ちなみに上海地区には49校の大学があり、情報処理係の学部のある大学は23校である。

CS&Sの概要:CS&S社は電子工業部の直轄のソフトウェアハウスであり、マイクロソフトの総代理店やCISCO社の総代理店を行いながら、Winの中国語化(中文Win)やオラクルの中文化などを行っている。全国に子会社関連会社を含めて15000名の社員を擁し、そのうち技術者は概ね5000名程度といっている。北京のキャンパスには1300名程度の技術者を擁して、11の事業本部に分かれてソフトウェア開発、システムインテグレーションなどの業務を遂行している。

政府系であるため国家的な大規模システムの開発経験を持つ。人民銀行システムや国税システムでは、372全県にサーバーを配した全国規模の大規模C/Sシステムの構築例がある。さらに郵電省からの通信ソフトウェアシステム、公安(警察)システム、空港システムあるいは油井制御システムなどの幅の広い業務を実施している。

海外企業との通信系ソフトウェアの合作経験としては、NECからの通信系ソフトウェアの受注、富士通との合弁会社による通信ソフトウェアの開発などがある。外国からの受注におけるコストは、プログラマレベルで1人月(160時間相当)で1000US$(時間単金では730円)、システムエンジニアレベルでは1200〜1500US$(時間単金では880〜1100円)である。日本企業からの発注に対するメリットとしては、日本語での仕様書をベースとして受注可能であり、インドやシンガポールなど最近のアジアにおけるソフトウェア産業国に比べて翻訳/逆翻訳の手間が不要であり、純粋にコストが引き下げられる点を強調している(ちなみにCS&Sでは日本語で仕様書を書けるメンバーは数十人「関連企業を含む」といっている)。この場合のSEコストは1400US$/人月となる。

なお、CS&SはISO9001の受験体制を取っており、本年度は基本ソフト(OS)部隊から、来年度はパッケージ部隊、再来年度はアプリケーション部隊と順次品質強化体制の整備につとめる意向を示している。

上海でのソフトウェア業界は極めて高い成長率に対応するためと、日本からの発注等から人材不足気味であり、企業を十分に選ばないと品質条件に問題の発生する可能性があるといわれている。大学の先生方はこの成長率は数年は続きそうだと見ており、業界筋もこれを否定していない。大学の先生方からは即席の学生が企業内での十分な研修無しにOJTでフィールドに出ていっていることに対して、十分な訓練体系を企業側に求めている。

企業側は、新たな技術分野を獲得して他の企業との優位差をつけることによって、生き残りと確実な成長とを期待している。このためにも日本からのソフトウェア受注を新規技術に着目して受注し、自分たちのために使って行こうといった姿勢が見られる。上海のコストは北京に比べて1〜2割程度高くつきそうである。

4.会食者